[開発ストーリー]HAKATA MIZUHIKI

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博多水引の長澤宏美さんとの出会いは、博多山笠カレンダーの写真家でもある八田さんからのご紹介でした。彼女の水引の展覧で、ワインボトルに水引を掛けた「さま」がとても印象的で、水引の新しい可能性を感じたのを覚えています。

そこで、辛子明太子の島本さんのブランディングデザインをしている時期に島本の代表と一緒に博多水引のワークショップに参加して、正月飾りを買って帰りました。島本でも長澤さんの水引は採用されています。

前向きな職人と良い商品は揃っていました。あとは、見せ方を工夫すれば新しい水引の付加価値が上げられる思いました。長澤さんは、多忙な中で、博多水引の知名度を上げたいと、イベントやPRに尽力されており、そのおかげで全国の有名百貨店と取引がある刃物屋の木屋さんから展示会の参加要請がありました。御祝い包丁を送る際に水引きを添えれば、「切る」と「結ぶ」で縁起が良いとされ、全国の水引きメーカーと取引がはじまりました。木屋さんは、博多水引を展示会の中心にしたいとの惚れ込みようだったそうです。

長澤さんからデザインのリクエストは、博多水引のロゴと箱とショップカードとリーフレットでした。コンセプトは「博多の粋」。基本の鮑結びをモチーフに、博多のHにも見えるようなフォルムを考案し、赤と紺色で粋な印象を強調しました。水引を入れる張り箱は、紺色にロゴを銀箔押しすることで、紳士的な印象に仕立てました。リーフレット用の写真は、粋具合をより演出するために、ファッション写真のような陰影の強いライティングで行いました。そのとき、伝統を一歩前に進めた感がありました。高級感を維持しつつ、水引きのイメージをファッション寄りのポジションにシフトできるということです。このようなポジショニングの変更で、用途や売り場や顧客層が変化します。同時に、東京から全国に話題になるだろうと思えた瞬間でもありました。

木屋さんでは、正月飾りを中心にボトルネックも販売。大きな反響で本人も驚かれたようです。ロゴと箱とショップカードで水引の装いを新たにし、プロダクトが3倍以上の付加価値を得ることに成功しています。販路開拓営業の助けになり、世間での評価も格段に上がりました。

長澤さんのこれまでの実績と行動が、ようやく世間に認められるような環境が訪れました。これから数年をかけてブランディングデザインを行っていく予定です。